北原白秋『竹林の七賢』朗読mp3

さても黄色い円月である。
さても閑雅な竹林である。
七人(ななたり)の賢い人、風月の友、
この幽人たちの面持、姿、

北原白秋『源平将棋』朗読mp3

春の夜の源平将棋、
あはれなほ思ひぞ出づる。
ただ一夜あてにをさなく
ほのかにも見てしばかりに。

北原白秋『泪芙藍(サフラン)』朗読mp3

罅(ひび)入りし珈琲碗(カウヒわん)に
泪芙藍(さふらん)のくさを植ゑたり。
その花ひとつひらけば
あはれや呼吸(いき)のをののく。

北原白秋『接吻』朗読mp3

臭のふかき女きて
身體(からだ)も熱くすりよりぬ。
そのときそばの車百合
赤く逆上(のぼ)せて、きらきらと
蜻蛉動かず、風吹かず。

北原白秋『乳母の墓』朗読mp3

あかあかと夕日てらしぬ。
そのなかに乳母と童と
をかしげに墓をながめぬ。

北原白秋『怪しき思』朗読mp3

われは探しぬ、色黒き天鵞絨(びらうど)の蝶、
日ごと夜ごとに針(ピン)を執り、テレビンを執り、
かくて殺しぬ、突き刺しぬ、ちぎり、なすりぬ。

北原白秋『陰影』朗読mp3

なつかしき陰影をつくらんとて
雛罌粟はひらき、
かなしき疲れを求めんとて
女は踊る。

北原白秋『青いソフトに』朗読mp3

青いソフトにふる雪は
過ぎしその手か、ささやきか、
酒か、薄荷か、いつのまに
消ゆる涙か、なつかしや。

北原白秋『秋の日』朗読mp3

小さいその兒があかあかと
とんぼがへりや、皿まはし……
小さいその兒はしなしなと身體反らして逆さまに
足を輪にして、手に受けて顔を踵にちよと挾む。

北原白秋『梨』朗読mp3

ひと日なり、夏の朝涼、
濁酒売る家の爺(おじ)と
その爺の車に乗りて、
市場へと--途にねむりぬ。

北原白秋『青いとんぼ』朗読mp3

青いとんぼの眼をみれば
緑の、銀の、エメロード。
青いとんぼの薄き翅
燈心草の穂に光る。

北原白秋『カステラ』朗読mp3

カステラの縁の渋さよな。
褐色(かばいろ)の渋さよな。
粉のこぼれが眼について、
ほろほろとが泣かるる。

北原白秋『見果てぬ夢』朗読mp3

過ぎし日のしづこころなき口笛は
日もすがら葦の片葉の鳴るごとく、
ジプシイの昼のゆめにもふるえる顫(ふる)ふらん。
過ぎし日のあどけなかりし哀愁(かなしみ)は
こまやかに匂シヤボンの消ゆるごと

北原白秋『人形つくり』朗読mp3

長崎の、長崎の
人形つくりはおもしろや、
色硝子………青い光線(ひすぢ)の射(さ)すなかで
白い埴(ねばつち)こねまはし、糊(のり)で溶かして、砥(と)の粉(こ)を交ぜて、

北原白秋『骨牌の女王の手に持てる花』朗読mp3

わかい女王(クイン)の手にもてる
黄なる小花ぞゆかしけれ。
なにか知らねど、蕊(しべ)赤きかの草花のかばいろは
阿留加里(アルカリ)をもて色変へし愁(うれひ)の華か、なぐさめか、
ゆめの光に咲きいでて消ゆるつかれか、なつかしや。

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