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老子

青の馬に白の車を挽かせて、
老子は幽かに坐つてゐた。
はてしもない旅ではある、
無心にして無為、
飄々として滞らぬ心、
函谷関へと近づいて来た。
ああ、人家が見える、
馭者は思はず車を早めたが、
何をいそぐぞ徐甲よと、
老子の微笑は幽かであつた。
相も変らぬ山と水、
深い空には昼の星、
道家の瞳は幽かであつた。

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解説

老子は周王室の書庫の記録官でしたが、周のおとろえを悟り、任を辞して西方へ向かいます。その途中、函谷関で関守の尹喜に請われて「老子」を著したそうです。

徐甲はその時の御者の名前です。

函谷関は戦国時代に秦国が作った関所。「鶏鳴狗盗」の故事や清少納言の歌「夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関は許さじ」で知られます。平家物語「大衆揃」に函谷関「鶏鳴狗盗」の故事が言及されています。

老子の穏やかな微笑に象徴されるような、水墨画的な風景、のんびりした感じが出るよう朗読しました。老子を描くのに、まさにこの、函谷関にさしかかった場面。いいとこ切り取ってきます。さすがです。

ローランドのr09というハンディーレコーダーで録音してます。天井や壁からの反響を拾わぬよう、上を手の平で覆いつつ録音しました。ハタから見ると貧乏くさい姿だったような。「とどこおらぬ心」の語尾でバフッと息がかかってしまいました。

どうにも老子の声がバカ殿ぽくなってしまい、老子の超然とした中に人生の重み軽み両方を漂わせた賢人ぷりが出せなかったのが悔やまれるところです。