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たそがれどき

たそがれどきはけうとやな、
傀儡師の手に踊る
華魁の首生じろく、
かつくかつくと目が動く…

たそがれどきはけうとやな、
潟に堕した黒猫の
足音もなく帰るころ、
人霊もゆく、家の上を。

たそがれどきはけうとやな、
馬に載せたる鮪の腹
薄く光つて滅え去れば、
店の時計がチンと鳴る。

たそがれどきはけうとやな、
日さへ暮るれば、そつと来て
生胆取の青き眼が
泣く児欲しやと戸を覗く……

たそがれどきはけうとやな。

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解説

子供の頃夕暮れ時に対して抱いた、幻想的な恐怖心を綴っています。

人形使いの手で踊っているおいらんの首、潟海に猫を落っことしたのが なんとか生還してひっそり歩いている姿、家の上を飛ぶ人魂、

馬の背に乗せた鮪の腹がキラキラ光り、それと連動するように店の時計 がチンと音を立てる、生肝取の青い眼がのぞく…

具体的イメージをいくつも重ねることによって「たそがれ時」の幻想的な 不気味さを表現していきます。

(注)
潟に落とした黒猫…北原白秋は子供の頃黒猫を潟海にほり捨てたようです。
「夏の入日があかあかと反射する時、私達の手から残酷に投げ捨てられた 黒猫が、黒猫の眼が、ぬるぬると滑り込みながら、もがけばもがくほど 粘粘した潟の吸盤に吸ひこまれて…」(「わが生ひ立ち」)

生肝取…北原白秋の詩に何度も登場する言葉です。「生きた肝を取るもの」 ということで、オバケとか悪霊の類。

抑えた声で再録しました。マイクはオーディオテクニカのat4050使用。