北原白秋『露台(バルコン)』 朗読をきく
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やはらかに浴(ゆあ)みする女子(おみなご)のにほひのごとく、
暮れてゆく、ほの白き露台(バルコン)のなつかしきかな。
黄昏のとりあつめたる薄明
そのもろもろせはしなきどよみのなかに、
汝(な)は絶えず来(きた)る夜のよき香料をふりそそぐ。
また古き日のかなしみをふりそそぐ。

汝がもとに両手(もろて)をあてて眼病の少女(おとめ)はゆめみ、
鬱金香(うこんこう)くゆれるかげに忘られし人もささやく、
げに白き椅子の感触(さはり)はふたつなき夢のさかひに、
官能の甘き頸(うなじ)を捲きしむる悲愁(かなしみ)の腕(かひな)に似たり。

いつしかに、暮るとしもなき窓あかり、
七月の夜の銀座となりぬれば
静こころなく呼吸(いき)しつつ、柳のかげの
銀緑の瓦斯(ガス)の点りに汝もまた優になまめく、 四輪車の馬の臭気(にほひ)のただよひに黄なる夕月
もの甘き花梔子(はなくちなし)の薫(くゆり)してふりもそそげば、
病める児のこころもとなきハモニカも物語(レジェンド)のなかに起こりぬ。


正直、難解でよくわからない詩ですが、雰囲気がよくて大好きです。なんか明治時代のハイカラな銀座の景色がしみじみ胸にせまる感じです。

「露台(バルコン)」は、バルコニー。建物の窓の部分に でっぱった張り出しのことです。

今では当たり前のこの建築パーツも当時は珍しかったのでしょう。銀座で バルコンを見ると、西洋風の物語めいた幻想がかけめぐったのでしょう。

ことに夕暮れ時なので、その幻想っぷりも昼に増して豊かなわけです。

げに白き椅子の感触(さはり)はふたつなき夢のさかひに、
官能の甘き頸(うなじ)を捲きしむる悲愁(かなしみ)の腕(かひな)に似たり。

…なんつーカッコいい表現かと思いました。バルコニーに西洋風の椅子が 置いてあるのでしょう。その質感を例えています。

主人公は下から露台を見上げてる ようなので「感触」がわかるのはおかしい気がしますが、あくまでイメージでしょう。

椅子の背もたれを支えている二本の棒が、ニューと伸びた二本の腕で、 なんか恋人のうなじを悲しげになでくりまわすように見えるということでしょうか。
地球人にはできない発想です。

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