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ひと日なり、夏の朝涼、
濁酒売る家の爺(おじ)と
その爺の車に乗りて、
市場へと--途にねむりぬ。

山の街、--珍ら物見の
子ごころも夢にわすれぬ。
さなり、また、玉名少女が
ゆきずりの笑(えみ)も知らじな。

その帰さ、木々のみどりに
眼醒むれば、鶯啼けり。
山路なり、ふと掌(て)に見しは
梨なりき。清しかりし日。

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解説

北原白秋の子供時代の記憶でしょうか。よそのオジサンの 荷車に乗って市場へ行ったが途中で寝てしまい、眼が覚めると もう帰り道だった。鶯が啼き、手には梨が握られていた… さわやかな春の一日です。

この梨は、せっかく市場へ行ったのに眠ってて見ることができなかった 少年に対し、オジサンが買ってくれたものかもしれません。

その優しさが、鶯の声や木々の緑と調和して、なんともさわやかな風情を かもし出しているのです。

玉名少女
「玉名」は九州の地名。「美しい」という意味の「玉」を懸ける。

知らじな
しらなかったなぁ。「な」は詠嘆の助詞。

その帰さ
その帰り道。