トップ > 邪宗門 > 噴水の印象

噴水の印象

噴水(ふきあげ)のゆるきしたたり。--
霧しぶく苑の奥、夕日の光、
水盤の黄なるさざめき、
なべて、いま
ものあまき嗟嘆(なげかひ)の色。

噴水の病めるしたたり。--
いづこにか病児啼き、ゆめはしたたる。
そこここに接吻(くちつけ)の音。
空は、はた、
暮れかかる夏のわななき。

噴水の甘きしたたり。--
そがもとに痍(きず)つける女神(ぢょじん)の瞳。
はた、赤き眩暈(くるめき)の中(うち)、
冷み入る
銀の節、雲のとどろき。

噴水の暮るるしたたり。--
くわとぞ蒸す日のおびえ、晩夏のさけび、
濡れ黄ばむ憂鬱症(ヒステリイ)のゆめ
青む、あな
しとしとと夢はしたたる。

すべての朗読音声を無料でお聴きいただけます。学校教科書付属CD・スマートフォン用アプリ等で採用されているプロの朗読です。なつかしくて新しい、情感あふれる白秋の詩の世界を、朗読によりいっそう豊かに味わえます。メールアドレスを入力して、「朗読をきく」を押してください。すぐに専用ページにアクセスできるurlをメールでお届けします。

携帯電話には届きません。パソコンのメールアドレスを入力してください。



メールマガジンの読者サービスとして無料公開するものです。後日メールマガジン「左大臣の古典・歴史の名場面」をお送りさせていただきます。すべて無料です。不要な場合、いつでも配信停止できます。当無料ファイル送付とメルマガ配信以外にメールアドレスを使うことはありません。第三者に開示することはありません。

解説

「噴水」は北原白秋の詩の詩に何度も登場するイメージです(「謀反」など)。 夕暮れ時、キラキラと輝きながら水をしたたらせる官能的な噴水の姿が 詩人の心を捉えたのでしょうか。

この「噴水の印象」は実景とイメージがたくみに交じり合い、幻想的な 雰囲気を作り出しています。

第一連は状況設定です。公園の奥にある噴水、そのゆるやかな水のしたたり、 水盤(水がたまっている部分)のさざなみに夕日が反射する 甘ったるい嘆きに満ちた雰囲気。

第二連では、その噴水の実景にイメージが混じってきます。 弱々しくしたたる噴水に病的なものを感じているのです(「病めるしたたり」)。

そこから病気の子がどこかで泣いている姿、声を連想します。

噴水の水しぶきは夢のように幻想的で、その水音を「接吻の音」と 聞きます。

晩夏の空に何か落ち着かない動揺を感じています(「暮れかかる夏のわななき」)。

第三連ではやや時間が経過しているようです。「赤き眩暈」と言っているように、 夕日が真っ赤になってきたのです。これは高揚感、性的な渇望を表しているようです。

噴水の水盤のところに女神像が彫刻されているか、あるいは 水のきらめきの中に女神の幻想を見たようです。「傷つける女神」「赤き眩暈」は破瓜の血を連想させます。

銀の節」は噴水の水音を美しい音楽のように聞いたのでしょう。しかし そんな中にも雲はとどろいて、嵐の予感?がするのです。

この「雲のとどろき」も第二連の「夏のわななき」と同様、性的な渇望をあらわしているのでしょう。

第四連ではついにその溜まりに溜まった渇望が爆発します。「晩夏のさけび」… さけびとはまた激しい言葉です。

濡れ黄ばむ憂鬱症のゆめ」…ああ、なんかもう逝くとこまで逝ってグッタリした感じ。 そして日が落ちて景色が真っ青になり「青む、」 噴水の水は夢のようにしたたり続けるのです。