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金魚

母さん、母さん、どこへ行た。
紅い金魚と遊びませう。
 
母さん、歸らぬ、さびしいな。
金魚を一匹突き殺す。
 
まだまだ、歸らぬ、くやしいな。
金魚をニ匹締め殺す。
 
なぜなぜ、歸らぬ、ひもじいな。
金魚を三匹捻ぢ殺す。
 
涙がこぼれる、日は暮れる。
紅い金魚も死ぬ死ぬ。
 
母さん怖いよ、眼が光る。
ピカピカ、金魚の眼が光る。

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解説

曼珠沙華(ひがんばな)』に通じる、 ホラーテイスト漂う童謡です。

西条八十の「残酷だ」という批判に白秋は反論しています。

「或る作家が、私の数百篇の中の一篇『金魚』を以って不用意にも単なる残虐視し而も私の他の童謡にも異を及ぼすまでの小我見を加えた。私は児童の残虐性そのものを肯定するものではない。然し児童の残虐性そのものはあり得る事である。私の『金魚』に於ても、児童が金魚を殺したのは母に対する愛情の具現であった。この衝動は悪でも醜でもない」(「白秋詩歌一家言・童謡私観」)

北原白秋の詩には猫を潟海に投げ込んだり、蜻蛉を雪駄で踏み潰したり、 子供の残酷さを描いた作品がけっこうあります。

自分で殺しておいて「怖いよ目が光る」とか言ってるあたり、子供の 理不尽が出てます。

自分が何をしてるか理解してない、その無邪気さが怖いので、「突き殺す」とかを変に恐々しく読まずサラッと朗読しました。

お母さんが帰って来て金魚の死体を見たら修羅場でしょう。

山田正紀著「金魚の目が光る」はこの「金魚」になぞらえて殺人事件が起こる歴史ミステリです。白秋も事件の依頼人として登場します。