生洲 小笠原にて
大きなる月は
まんまろく転び出でたり。
護謨(ゴム)の葉は豊かに動く。
いざや歩まん、二人して。
生洲には瑠璃のさざなみ、
ゆれゆれて金の輪となる、
ああいまし、
麗(うつく)しき玳瑁(たいまい)の雄(お)は
雌の上にそつと重なる。
静かなれ、深く潜(す)めかし、
月はいま蒼き暈(かさ)きる、
磯煙草みどりにゆらぐ。
ああ、しばし
玳瑁は幸福住む。
声もなし、さあれ、うつくし、
何者か、光りとろけて
霊(たましひ)をゆするがごとし、
玳瑁はふたつ重なる。
護謨ノ葉は豊かに動く。
いざや眠らん、二人して。
メールマガジンの読者サービスとして無料公開するものです。後日メールマガジン「左大臣の古典・歴史の名場面」をお送りさせていただきます。すべて無料です。不要な場合、いつでも配信停止できます。当無料ファイル送付とメルマガ配信以外にメールアドレスを使うことはありません。第三者に開示することはありません。
(注)
玳瑁(たいまい)…カメの一種