トップ > 海豹と雲 > 雨中小景

雨中小景

雨はふる、ふる雨の霞がくれに
ひとすじの煙立つ、誰が生活(たつき)ぞ、
銀鼠(ぎんねず)にからみゆ古代紫、
その空に城ヶ島近く横たふ。

なべてみな空(あだ)なりや、海の面に
輪をかくは水脈(みを)のすぢ、あるは離れて
しみじみと泣きわかれゆく、
その上にあるかなきふる雨の脚。

遥なる岬には波もしぶけど、
絹漉(きぬごし)の雨の中、蜑小舟(あまをぶね)ゆたにたゆたふ。
棹あげてかぢめ採りゐる
北斎の蓑と笠、中にかすみて
一心に網うつは安からぬけふ日の惑ひ。

さるにてもうれしきは浮世なりけり。
雨の中、をりをりに雲を透かして
さ緑に投げかくる金の光は
また雨に忍び入る。音には刻めど
絶えて影せぬ鶺鴒(せきれい)のこゑをたよりに。

すべての朗読音声を無料でお聴きいただけます。学校教科書付属CD・スマートフォン用アプリ等で採用されているプロの朗読です。なつかしくて新しい、情感あふれる白秋の詩の世界を、朗読によりいっそう豊かに味わえます。メールアドレスを入力して、「朗読をきく」を押してください。すぐに専用ページにアクセスできるurlをメールでお届けします。

携帯電話には届きません。パソコンのメールアドレスを入力してください。



メールマガジンの読者サービスとして無料公開するものです。後日メールマガジン「左大臣の古典・歴史の名場面」をお送りさせていただきます。すべて無料です。不要な場合、いつでも配信停止できます。当無料ファイル送付とメルマガ配信以外にメールアドレスを使うことはありません。第三者に開示することはありません。

北原白秋は多くの雨の詩を詠んでいます。「銀座の雨」「城ヶ島の雨」 。