北原白秋『立秋』朗読mp3
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柳川のたつたひとつの公園に
秋が来た。
古い懐月楼の三階へ
きりきりと繰り上ぐる氷水の硝子杯(コツプ)、
薄茶に、雪に、しらたま、
紅い雪洞(ぼんぼり)も消えさうに。

柳川のたつたひとつの遊女屋に
薊が生え、
住む人もないがらんどうの三階から
きりきりと繰り下ぐる氷水の硝子杯、
お代わりに、ラムネに、サイホン、
こほろぎも欄干に。

柳川のたつたひとりのNOSKAIは
しよんぼりと、
月の出の橋の擬宝珠(ぎぼしゆ)に手を凭(もた)せ、
きりきりと音のかなしい薄あかり、
けふもなほ水のながれに身を映す。

「氷、氷、氷、氷、……」

(注)
NOSKAI…遊女。柳川の方言。

「柳川」「水路」などと同じく故郷柳川の風物を取り入れた詩です。 柳川の懐月楼跡にはこの「立秋」の詩が刻まれた碑があります。

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