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糸車

糸車、糸車、しづかにふかき手のつむぎ
その糸車やはらかにめぐる夕ぞわりなけれ。
金と赤との南瓜(たうなす)のふたつ転がる板の間に、
「共同医館」の板の間に、
ひとり座りし留守番のその媼(おうな)こそさみしけれ。

耳もきこえず、目も見えず、かくて五月となりぬれば、
微(ほの)かに匂ふ綿くづのそのほこりこそゆかしけれ。
硝子戸棚に白骨(はっこつ)のひとり立てるも珍らかに、
水路のほとり月光の斜に射すもしをらしや。
糸車、糸車、しづかに黙(もだ)す手の紡(つむ)ぎ、
その物思やはらかにめぐる夕ぞわりなけれ。

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解説

診療所の板の間に婆さんがいて、機を織っている、埃が舞う、 戸棚には骸骨(標本?)が立っている。水路のほとりで月光が差している…ちょっと怖いような、幻想的な光景です。

柳川に実際こういう診療所があったのでしょうか。それにしても 夜中に診療所でバアさんが機織りしてるというのはどう考えても異常な光景です。

白秋が作り上げたイメージでしょうか。ギリシア神話の「運命の女神」のイメージもあるのかもしれません。

また「三枚のお札」など昔話や民話に登場する「やまんば」が糸車をいじっているというのも定番です。