曇り日のオホーツク海

光なし、燻し空には
日の在処(ありど)、ただ明るのみ。

かがやかず、秀(ほ)に明るのみ、
オホーツクの黒きさざなみ。

影は無し、通風筒の
帆の綱が辺(へ)に揺るるのみ。

眺めやり、うち見やるのみ、
海豹(あざらし)のうかぶ潮なわ。

寒しとし、厚しとし、ただ、
霧と風、過がひ舞ふのみ。

われは誰ぞ、あるかなきのみ、
酔はむとも、醒めむとも、まだ。

燻し空、かがやかぬ波、
見はるかす円(まろ)き涯(はて)のみ。

解説

北原白秋は大正14年(1925)7月鉄道省主催の「樺太観光団」に吉植庄亮と共に加わります。 この「曇り日のオホーツク海」をはじめ「海豹と雲」に収録された多くの作品はこの旅行で見た光景が元になっています。

紀行集「フレップトリップ」、歌集「海阪(うなさか)」もこの旅行から着想を得ています。

また樺太行きの帰路、白秋は北海道を旅し、その印象をもとに有名な「この道」を書きました。

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朗読・解説:左大臣光永