童と父

今は黄菊の盛りである。
わたしは童とあそんでゐる。
童はわたしのかはいい子だ。
わたしは父ゆゑおもはゆい、
童は黄菊をむしつてゐる、
わたしはその頬をしやぶつている、
おお、よい子だ、
めづらしい澄んだ蒼空だ、
鵯(ひよ)までが小さく迅く翔けてゐる。

解説

二重虹」と同じく、長男隆太郎くんへの親バカっぷりを炸裂させた内容です。「ほうーれ、ほれほれ」とわが子にしゃぶりついてる父の姿。いかにもノンビリして微笑ましいです。

ただ、「水墨集」のコンセプトに沿って「童」「黄菊」「鵯」など道具立てが水墨画的です。実体験を描いたというより、水墨画世界にアレンジしたものでしょう。

「水墨集」が発表された大正12年(1923年)は隆太郎くんが生まれた翌年にあたります。この年は関東大震災で白秋がせっかく建てた「木兎の家」が半壊してます。大変な中にも、子供をはぐくんでいたんですなあ。

北原隆太郎は後に禅学者として活躍し、「白秋全集」をてがけます。つい先日の平成16年、お亡くなりになりました。多磨霊園にお墓があります。

水墨集

朗読・解説:左大臣光永

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