片恋
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あかしやの金と赤とがちるぞえな。
かはたれの秋の光にちるぞえな。
片恋の薄着のねるのわがうれひ
「曳舟」の水のほとりをゆくころを。
やはらかな君が吐息のちるぞえな。
あかしやの金と赤とがちるぞえな。
解説
北原白秋は「金と赤」という
色彩を好んで使います。実際の色というより詩的なイメージです。
普通あかしやといえば黄色ですが、ここでいう「あかしやの金と赤」は
散っている葉のことです。季節も秋だし。
「薄着のねる」とは、フランネルの柔らかい着物のことです。そんな
ふうに柔らかく繊細な私の憂い。そうとうキザです。
「曳船」は東京墨田区の地名です。川沿いを歩いていると思われます。
はらはらと散るあかしやの葉に、片思いの相手の柔らかい吐息を
空想しているのです。
今の隅田川は汚く淀んでいて、とてもこんな詩的な雰囲気じゃないですが、白秋の時代は
違ったのでしょう。
白秋は後にこの「片恋」を自分の新俗謡詩の萌芽であると言っています。
詩集「思ひ出」の中でじょじょに開花していった歌謡調のスタイルが
ここに至り成熟を迎えるのです。
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朗読・解説:左大臣光永