槍持

槍は錆びても名は錆びぬ、
殿につきそふ槍持の槍の穂尖の悲しさよ。

槍は槍持、供揃、
さつと振れ、振れ、白鳥毛。

けふも馬上の寛濶に、
殿は伊達者の美い男、
三国一の備後様、
しんととろりと見とれる殿御。
槍は槍持、銀なんぽ。
供の奴さへこのやうに、あれわいさの、これわいさの、取りはづす、
やあれ、やれ、危なしやの、槍のさき。

槍は錆びても名は錆びぬ、
殿のお微行、近習まで
身なりくづした華美づくし、
槍は九尺の銀なんぽ、
けふも酒、酒、明日もまた、
通ふしだらの浮気づら、
わたる日本橋ちらちらと雪はふるふる、日は暮れる、
やあれ、やれ冷たしやの、槍のさき。

槍は槍持、供ぞろへ、
さつと振れ、振れ、白鳥毛。

雪はふれども、ちらほらと
河岸の問屋の灯が見ゆる、
さてもなつかし飛ぶ鴎、
壁のしたには広重の紺のぼかしの裾模様、
殿の御容量に、ほれぼれと
わたる日本橋、槍のさき、
槍は担げど、空のそら、渋面つくれど供奴、
ぴんとはねたる附髭に、雪はふるふる、日は暮れる。
やあれ、やれ、やるせなの、槍のさき。

槍は槍持、供ぞろへ、
さつと振れ、振れ、白鳥毛。

槍は錆びても名は錆びぬ。
殿につきそふ槍持の槍の穂さきの悲しさよ。
いつも馬上の寛濶に、
殿は伊達者のよい男、
さぞや世間の取沙汰に
浮かれ騒ぐも女なら。
そこらあたりの道すぢの紺の暖簾も気がかりな。
槍は九尺の銀なんぽ、
槍を持つ身のしみじみと、涙流すもつとめ故、
さりとは、さりとは、供奴、
雪はふるふる、日は暮れる。
やあれ、やれ、しよんがいなの、槍のさき。

解説

イケメンで甲斐性ありまくりの殿に付き添う下っ端の槍持ちの 哀愁です。

軽妙なテンポいい言葉なのでつい楽しく読んでしまいますが、「哀愁」が基本のトーンです。そこに注意しました。

ややマイクから離れて(腕1本弱くらい)録音しました。部屋鳴りを拾ってますが、これくらい拾ったほうが感覚的に「大きな音」になる気がします。マイクの距離は声量や作品内容によって柔軟に変えたほうがいいようです

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朗読・解説:左大臣光永