五月

新しい烏龍茶と日光、
渋味をもつた紅さ、
沸き立つ吐息……

そうして見よ、
牛乳にまみれた喫茶店の猫を、
その猫が悩ましい白い毛をすりつける
女の膝の弾力。

夏が来た、
静かな五月の昼、湯沸(サモワール)からのぼる湯気が、
紅茶のしめりが、
爽やかな夏帽子の麦ワラに沁み込み、
うつむく横顔の薄い白粉(おしろい)を汗ばませ、
而(さう)してわかい男の強い体臭(にほひ)をいらだたす。

「苦しい刹那」のごとく、黄ばみかけて
痛いほど光る白い前掛の女よ。
「烏龍茶をもう一杯。」

解説

初夏の喫茶店のさわやかな風景です。 麦わら帽子とかサモワールとか、 爽やかなイメージを綴ります。

しかし、その中にも猫がウェイトレスの膝に体を擦り付けたり(しかも ミルクまみれで)、汗ばんだ白粉とか、エロチックなイメージをけして忘れてません。

というより、むしろそれが主題のようです。

東京景物詩及其他

朗読・解説:左大臣光永

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