忠弥

城の御濠の深みどり、
雪を吸ひ込む舌うちの
しんしんと沁むたそがれに、
鴨の気弱がかきみだす
水の表面(うわべ)のささにごり
知るや知らずや、それとなく
小石投げつけ、--
ひつそりと底のふかさをききすます
わかき忠弥か、わがおもひ。

君が秘密の日くれどき、
ひとり心につきつめて
そつとさぐりをなげつくる
深き恐怖(おそれ)か、わが涙--
千万無量の瞬間(たまゆら)に
雪はちらちらふりしきる。

解説

「忠弥」は江戸時代の浪人丸橋忠弥。宝蔵院流槍術の達人。由比正雪の幕府転覆計画に 加担するも計画は密告により発覚し、磔にされます。

長曾我部盛親の落胤という説もあります。

歌舞伎や講談の題材になり、忠弥が酔ったふりをして江戸城の堀に 石を投げ込み、深さを測ろうとする場面は有名です。

そんなふうに君の心に石を投げ入れ気持ちを測ろうとしている僕だよ、 という詩です。

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朗読・解説:左大臣光永