帰去来辞 陶淵明
帰りなんいざ。
田園将に蕪れなんとす。
胡ぞ帰らざる。
既に自ら心を以て形の役と為す。
奚ぞ惆悵として独り悲しまん。
已往の諌められざるを悟り、
来者の追ふべきを知る。
実に塗に迷ふこと其れ未だ遠からず。
今の是にして昨の非なりしを覚る。
舟は揺揺として以て軽くあがり 、
風は飄飄として衣を吹く。
征夫に問ふに前路を以てし、
晨光の熹微なるを恨む 。
解説
陶淵明(365-427)中国東晋時代の詩人。
『帰去来辞』は41歳にして役人をやめ田舎に引きこもる意気込みを歌った詩です。
ああもう、役人なんてウンザリだ。田舎はいいなあ。自然は最高だという話です。
多少強がりも入っている気がしますが、
これから始まる田舎生活への希望に満ちています。
一方、北原白秋の『帰去来』は目が見えなくなり、たとえ故郷柳川に帰っても
その景色を見ることができない…段違いな悲壮感です。
久々に再録しました。だいぶ声の伸びが良くなってきた気がします。
朗読・解説:左大臣光永