硝子切るひと
君は切る、
色あかき硝子の板を。落日(いりひ)さす暮春の窓に、
いそがしく撰びいでつつ。君は切る、
金剛の石のわかさに。アブサンのごときひとすぢ
つと引きつ、切りつ、忘れつ。君は切る、
色あかき硝子の板を。君は切る、君は切る。
解説
ガラス工場の光景でしょうか。黙々とガラスを切ってるガンコな職人の横顔が浮かんできました。
アブサンはニガヨモギなどから作った強烈に強い酒。とても気持ちよくなれます。実際に呑んだことのある方なら、砥石でガラスを切ってる、そのキィーンという鋭い切り込みをアブサンと例えてるのは、よくわかると思います。
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朗読・解説:左大臣光永