待ちぼうけ
待ちぼうけ、待ちぼうけ、
ある日せっせと、野良かせぎ、
そこへ兎が飛んで出て、
ころり、ころげた
木のねっこ。
待ちぼうけ、待ちぼうけ、
しめた。これから寝て待たうか。
待てば獲ものは駆けて来る。
兎ぶつかれ、
木のねっこ。
待ちぼうけ、待ちぼうけ、
昨日鍬とり、畑仕事、
今日は頬づゑ、日向ぼこ、
うまい伐り株、
木のねっこ。
待ちぼうけ、待ちぼうけ、
今日は今日はで待ちぼうけ、
明日は明日はで森のそと、
兎待ち待ち、
木のねっこ。
待ちぼうけ、待ちぼうけ、
もとは涼しい黍畑、
いまは荒野の箒草、
寒い北風、
木のねっこ。
解説
今日まで歌い継がれている童謡(唱歌)「待ちぼうけ」です。大正12年(1923)発表。大正14年満州教育会の依頼で山田耕作により作曲されました。
「ペチカ」と並んで満洲に在住する日本人に向けた「満洲唱歌」として作曲されました。
戦時中は満州の教科書から姿を消しますが戦後復活。今日まで
音楽教材として採り上げられることが多いです。
各連二回ずつ八回も「待ちぼうけ」という単語が登場し、一度聴いたら脳にへばりつきます。繰り返しの大切さを感じます。
北原白秋は満洲の伝説から「待ちぼうけ」の着想を得たといいます
(童謡集「子どもの村」自註)。
また「韓非子」には「守株待兎(しゅしゅたいと、くひぜをまもりてうさぎをまつ)」という話があります。
「古い習慣に染まって時勢に対応できなくなる」ことを戒めた話ですが、
北原白秋の「待ちぼうけ」はそんな教訓臭を廃してユーモラスな感じになってます。「こんなマヌケな男がいましたとさ(笑)」的な。
作曲者の山田耕筰も白秋の意図を汲み、軽快な民謡調に仕上げました。
前奏と後奏は大連で聞いたチャルメラの音をヒントにしたといいます。
第一節の「せっせと」は最初「せっせこ」だったのを北原白秋自身が
あらためました。
ビジュアル系インディーズバンド、ガゼットのアルバム「午前0時のとらうまラヂヲ」(2003年)に「待ちぼうけの公園で…」という曲が収録されてます。内容はまったく関係ないですが。
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