落葉松

こんにちは。左大臣光永です。先日、京都で講演してきました。紫式部について語りました。来てくださった方々、ありがとうございます!二次会も大いに盛り上がって、楽しいひとときでした!やっぱり楽しいですねえ直接人前で語るのは。次回は4月18日(土)開催です。鴨長明について語ります。

しばらく歴史の話を続けたので、本日は気分を変えて詩を読みます。

北原白秋の詩「落葉松」を読み、解説します。

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からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。


からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。


からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。


からまつの林の道は、
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。


からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり、
からまつとささやきにけり。


からまつの林を出でて、
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。


からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。


世の中よ、あはれなりけり。
常なれどうれしかりけり。
山川に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。

解説

北原白秋の詩でこの「落葉松」が一番有名ではないでしょうか。 大正十年十一月の「明星」に発表されました。当初は七章の詩で第四章が最後でしたが、「水墨集」に再録する際第八章が書き足されました。

大正十年、北原白秋が信州星野温泉で の自由教育夏期講習会に講師として招かれ婦人(佐藤菊子)と共に朝夕落葉松の林を散策する中で作られました。

星野温泉には落葉松の詩碑があります。自然石に「落葉松」の全文が活字体で刻まれ、最後の第八章は白秋の自筆が銅版に刻まれ、はめ込まれています。

碑の傍には落葉松の大木が一本デンと立ってます。雰囲気いっぱいです。

主題は第一章に要約されています。落葉松の寂しさ、その寂しさに共感し、自らの寂しさを重ね、自然と一体化する…とかいったことでしょう。 「落葉松」という言葉が17回も使われています。

繰り返しによって、ザァーとどこまでも続く落葉松の林を表現しています。 「からまつ」という言葉のリフレインが音楽的効果を生んでいます。

舞台は信州なのですが、むしろ具体的場所はどうでもよく、那須なり九重なり、ザーーッと 風の吹く高原とか、さわやかな林を歩く時は、ぜひ思い出したい詩です。

この「落葉松」について北原白秋自身の注に、

落葉松の幽かなる、その風のこまかにさびしくものあわれなる、 ただ心より心へと伝ふべし。
また知らん。その風はそのささやきは、またわが心のささやきなるを。
読者よ、これらは声に出して 歌うぺききわものにあらず。ただ韻(ひびき)を韻とし、匂いを匂いとせよ
…と語っています。

雑誌「詩と音楽」(大正十一年)には、
この七章は私からいえば、象徴風の実に幽かな自然と自分との心状を 歌ったつもりです。
これはこのまま香を香とし、気品を気品として 心から心へ伝うべきものです。
なぜかなら、それはからまつの細かな葉をわたる冷え冷えとした風の そよぎ、さながらその自分の心の幽かなそよぎでありますから

と書いています。

つまり、朗読するのは邪道です。心の中でシミジミ かみしめるのが良い、ということでしょうか。確かに頭の中で 暗誦しながら朝の軽井沢を歩いた時が、最もこの詩に近づけた 気がしました。

私は北原白秋といえばこの「落葉松」くらいしか知らなかったので、 こういうサワヤカな詩ばかりを作ってる人だと思ってました。

でも、この作風になったのは30代後半で、20代のは毒々しい極彩色の、 意味のつかみがたい、狂人の幻想のような詩が多いことを、後に知りました。

落葉松はマツ科カラマツ属の針葉樹。長野県や群馬県の高原に多く、針葉樹なのに落葉する珍しい樹です。針葉樹で落葉するのは日本では落葉松だけです。

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