酒の精

『酒倉に入るなかれ、奥ふかく入るなかれ、弟よ、
そこには恐ろしき酒の精のひそめば。』
『兄上よ、そは小さき魔物ならめ、かの赤き三角帽の
西洋のお伽譚によく聞ける、おもしろき…………。』
『そは知らじ、然れどもかのわかき下碑にすら
母上は妄りにゆくを許したまはず』
『そは訝しきかな、兄上、かの倉の内には
力強き男らのあまたゐれば恐ろしき筈なし』
『げにさなり、然れども弟よ、母上は
かのわかき下脾にすらされどなほゆるしたまはず。』
酒倉に入るなかれ、奥ふかく入るなかれ、弟よ。』

北原家は柳川藩の御用達として代々廻船問屋を営んでいましたが、白秋の父の代から酒造業に転じました。
屋号を古問屋(ふつどいや)または油屋といいました。

酒造の時期になるとおおぜいの杜氏たちが集まって作業をしたのです。少年時代の北原白秋は、 作業する大人たちの中で弟とよく遊んだのでしょう。実際こんな子供らしい秘密めいたやりとりも行われたのかもしれません。

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思ひ出

朗読・解説:左大臣光永